大型ハウスで越のルビー栽培

40歳で転身誇りと自信

印牧 静可記者(仁愛大学 3年)

 福井が誇るミディトマト「越のルビー」。その生産を大型ハウス4棟で手掛けるのが、小浜市加茂の北川農園だ。トマトは幅16メートル、奥行き81メートルのハウスで水耕栽培されている。苗の成長に合わせて天井は高く作られ、中に入ってみると、その広さと高さが際立っていた。
 代表の北川博司さん(50)は、40歳ごろまではダンプカーの運転手をしていたという。一見こわもてで、がっしりとした体格。農家という印象はあまり受けなかった。
 北川さん自身も「農業をするつもりは全くなかった」と話す。もともと兼業農家で、仕事終わりの夜間や休日に田んぼ作業をしていたが、父の病気をきっかけに、兄弟の反対を押し切って専業農家に転身することを決断。当初は、大玉トマトやキュウリを栽培していたが、5年ほど前に、大型ハウスを4棟建てて越のルビーの栽培に乗り出した。
 最初は農業で生計を立てていけるか不安もあったという。農業について一から学ぶため、他の農家に弟子入り。毎日ひたむきに作業に励み、貴重な経験を積んだという。
 現在は農園の経営も軌道に乗り、兄弟とパート9人で営んでいる。販売はJA若狭が担い、連携しておいしい作物を消費者に届けている。従業員を増やしてさらなる規模拡大を目指しているが「募集してもなかなか集まらない」と話す。
 若者らの農業離れが懸念されているが、北川農園の施設では、水耕栽培の養液やハウスの温度などの管理は機械化されていて、私が持っていた農業のイメージとは異なり、若者でも取り組みやすいのではないかと感じた。実際、今春には、高校を卒業する若者が入社するそうだ。
 北川さんが思う農業の魅力とは「大変なことも多いが、自分が苦労して育てたものを食べて『おいしい』と言ってもらえること」だという。専業農家に転身して、仕事にやりがいと自信を感じているようだった。
 農業について語る北川さんからは、自分の理想を追い求めるこだわりと熱い思いが感じられた。

※ 本記事は、平成31年2月23日付福井新聞に掲載されました。