平均28歳の大規模経営法人

担い手育成に使命感

巻田 恵理奈記者(福井県立大学 1年)

 少子高齢化や農村地域の人口流出に伴って農業の担い手は減り、耕作放棄地は増えている。そういった背景から法人化する農業団体が少しずつ増えてきた。今回私が取材した、あわら市の田川幹雄さん(51)、由佳代さん(51)夫妻が経営する田川農産もその一つだ。
 社長の幹雄さんは2008年、県内では早い段階で個人経営から法人化して大規模経営農業を行っている。自らの病気の発症を機に「いつ自分がどうなるかわからない」という危機感から、人を雇うことを決心した。また、経営の幅を広げるために、株式会社としての運営をスタートしたそうだ。
 大規模農業ということもあって、農機や農舎は大きい。農機といえば、運転席に囲いがなくて落ちる危険があったり、雨風を受けて作業効率が落ちたりしてしまうイメージがあったが、試乗させてもらった巨大なトラクターは、運転席がしっかり囲われていて作業するのに苦がないような仕様になっていて驚いた。
 10集落にわたる100ヘクタール超の広大な耕作面積も特徴的だ。その中には、効率があまりよくない場所もあるそうだが、先代からの人とのつながりを大切にしている。また「自分が耕さないとこの土地は荒れてしまう」という使命感も持っているという。効率化が重視される時代にあっても、農業では昔からの付き合いを大事にする姿勢も大切だと感じた。
 また、従業員の平均年齢が28歳と若いことも印象的だった。田川農産では会社経営の土台となる福利厚生がしっかり整えられているため、若者が働きやすい環境という。幹雄さんは「若手は一人前になると独立してしまうこともある」と悩みも打ち明けていたが、次代の担い手を育成することは、社会全体への貢献につながると感じた。
 田川農産では、育苗から脱穀、販売の一部までを自ら行っている。幹雄さんは「自分でどこまでできるかを考えることが重要だ」と話していた。社長として資金をやりくりする上で、自前でできることは自前で行い、利益を上げる方法を常に試行錯誤しながら考えているそうだ。
 法人化する農家が増えてきているとはいえ、福利厚生がしっかり整えられていないところや、経営がなかなか軌道に乗らないところもあるかもしれない。そういった意味では、田川農産はこれからの農業のあるべき形そのものなのかもしれない。

※ 本記事は、平成31年1月24日付福井新聞に掲載されました。