福地鶏1000羽を平飼い

ストレス減で品質良く

笹原 帆乃佳記者(福井県立大学 3年)

 鶏舎に足を踏み入れると、そこには多くの「福地鶏(ふくじどり)」が歩き回っていた。
 坂井市三国町にあるマイファームオリジンでは、約1千羽の鶏が飼育されている。その全てが福地鶏という品種だ。「平飼い」という方法で、県内の3分の1もの福地鶏を飼育している。
 福地鶏とは、県内で半世紀以上育種された「ウエミチレッド」に、純国産の「岡崎おうはん」を掛け合わせて作られた、卵肉兼用の鶏。福井の新しいブランド地鶏で、黄身が濃く弾力のある卵と、かみ応えのある肉質が特徴だ。
 卵はスイーツとの相性も良く、マイファームが経営する市内のカフェレストラン「リリー」でも、プリンや焼き菓子などに加工し販売されている。鶏舎へ取材に行く前にカフェへ寄り、卵かけご飯で初めて食べたが、濃厚な味わいでとてもおいしかった。
 ではなぜ、マイファームの鶏は品質が良いのだろうか。それには平飼いが関係しているそうだ。一般的な飼育では鶏を狭いゲージに入れ、餌やりや卵の回収を効率的に行う。しかしマイファームでは、鶏舎を大きな部屋に区切り、その中で自由に動き回れるようにしていた。鶏はストレスの少ない自由な環境で育つことができる。
 集団の中でどうしてもいじめられてしまう鶏を別の部屋へ移動させるなど、細かな配慮も万全。「ここまでするのか」と驚いた。鶏舎を見学させてもらい、手間を惜しまず育てることで質の高い鶏になることが分かった。スタッフの鈴木涼佑さん(29)も「食べた人がおいしいと言ってくれるとうれしい」と笑顔を見せていた。
 そして、同じように自由な環境で飼育されている動物がいる。それは豚と牛だ。
 特に豚の飼育事業は「マイぶぅ」というネーミングで力を入れている。豚は電気柵に囲まれた休耕地に放牧され、そこに生えている草などを餌にしている。草や土を食べることで肉の臭みはなくなり、動き回ることでストレスもたまりにくい。通常、大きく育ち過ぎると出荷が難しくなるが、こうして育った豚は150キロ以上になっても出荷できるそうだ。さらに、豚は穴を掘る習性もあるため、休耕地を耕してくれる。まさに一石二鳥だ。
 決められた範囲の中ではあるが、伸び伸びと自由に動き回る動物たち。間近でその姿を眺めることができ、ストレスの少ない環境づくりは、人間だけでなく全ての動物にとって大切なのだと感じた。

※ 本記事は、平成31年2月2日付福井新聞に掲載されました。