就農5年 若手園芸農家
ビジョンと情熱 実感
渡利 道雄記者(福井大学 4年)
福井市小羽町。水田が広がるこの地域で、レタスやキャベツなどを作る園芸農家の東俊太朗さん(30)を訪ねた。福井に生まれ、大学進学で一度古里を離れたが、就農のためUターンして5年目を迎えた若手農家だ。現代農家が抱えるさまざまな問題に立ち向かい、厳しい自然と寄り添いながら農業に打ち込む姿がそこにはあった。
東さんの両親は兼業農家で、農業は身近な存在だったという。大学では生物学を専攻した。周りが就職や進学など卒業後の進路を決める中、東さんは「研究者か、旅人か、農家か」と悩んでいた。そこで考えたのは、どの職が自分の理想の仕事像に近いかということだった。
東さんの理想の仕事像とは▽場所や時間にとらわれない▽しっかり稼げる▽旅好きらしく、長期休暇をとってハワイへ行ける▽おいしいものを作る-ということ。これらの条件に当てはまる選択肢が農業だったという。周りに言われたからではなく、明確なビジョンを持って自分の意志で進路を決めた東さんは、強い芯の持ち主だと感じた。
当初は水稲農家を目指したが、稲作にはない品種、栽培方法の豊富さなど園芸農業の魅力や面白さを感じ、露地園芸農家となったという。
しかし、自然が相手の仕事は思い通りにいかない。予想しなかった病害虫に悩まされることもあった。協力を求めようにも近くに同年代の農家がいなかった。いろんな課題や悩みもあったが、自然を敵と捉えるのではなく、うまく付き合いながら解決していくものだと自然から学んでいったようだ。
現在、東さんは農家同士のつながりをつくることにも力を入れている。「成功した農家が独特な手法だと、それをまねするのは難しい。誰でも稼げるスタイルを構築し、まずは自分が手本となりたい。励まし合ったり、手が空いたときは手伝い合ったりするようなつながりをつくっていければ」と地域の未来を考えて行動している。
語り口や表情は柔和ながらも、その根底にある思いには熱いものを感じた。東さんが農業でしっかり稼いで、冬場の長期休暇にハワイ旅行に行ける日はそう遠くないと思った。
※ 本記事は、平成30年12月20日付福井新聞に掲載されました。