作物愛するこだわり農家

恐れず挑戦 在り方模索

野路 真由美記者(福井工業大学 2年)

 トマトやイチゴ、ブルーベリー、ブドウなど多彩な作物を栽培している明城ファーム(越前市杉崎町)を取材した。常に新しいことに挑戦し、こだわりの農法に取り組んでいる。3~5月には大人気のイチゴ狩りが楽しめるという。
 話を聞いた明城義和さん(36)は、以前は建設関係の仕事をしていたという。「景気に影響されにくい農業がしたい」と2004年、父が経営するファームに入った。現在は社長として、県外で開催される講習会や交流会にも積極的に参加し、新しい農業の在り方を模索している。13年からはケチャップやジャム、ゼリーなどトマトの加工食品も手掛け、6次産業化に力を注いでいる。
 昨年11月に取材で訪れ、2棟のビニールハウスを見学した。一つは時期盛りのイチゴ。ハウスに入ると、胸の高さにずらりと並ぶ苗が目を引いた。明城ファームでは土は使わず「ロックウール」という素材を使い、ハウス栽培ならではの方法を行っている。
 もう一つのハウスでは、ほんのり赤く色づいたトマトがなっていた。そろそろ収穫するのか聞いたところ、「収穫するトマトは、その場で食べておいしいものだけ」だそうで、完全に熟するまでは収穫しないという。
 太陽の光をたっぷりと浴びた完熟トマトは、栄養満点でおいしさも格別だが、すぐに売らないと傷んでしまうリスクを伴う。それでも完熟の味にこだわりトマト本来のおいしさを届けている。明城さんは「なるべく卸業者を通さずお客さんに直接販売することで、自然なおいしさを届けたい」と熱く語ってくれた。
 北陸自動車道武生インターチェンジや北陸新幹線南越駅(仮称)に近い立地を生かし、今後は観光関連の事業にも力を入れたいという。例えば色とりどりのトマトを植え「見た目の美しい農場をつくり、観光の目玉にしたい」と構想は膨らんでいる。
 ほかにも明城さんにはたくさんのビジョンがある。周辺の農家と協力した地域貢献や、高齢者の積極的な雇用、子どもたちに農業を理解してもらう取り組みなど、新しいことを恐れず、挑戦していく意思を感じた。
 最近は種なしのブドウも人気だが、明城さんは「果実は種を育てるためにある。やっぱり自然の姿そのままの“種あり″がおいしい」とこだわる。農業を愛する真心の種が、明城ファームで育まれてどのような実をつけていくのか、今後の挑戦が楽しみだ。

※ 本記事は、平成31年2月16日付福井新聞に掲載されました。