無農薬こだわり野菜栽培

手間、愛情でおいしく

酒井 摩耶記者(仁愛大学 3年)

 敦賀市木崎の重武農園を訪れると、佐藤宏美さん(38)と笠羽久美子さん(38)の双子姉妹が明るい笑顔で迎えてくれた。ハウスでさまざまな野菜を育てている重武農園は、2人の両親が25年前に始め、当初から農薬も化学肥料も使わない栽培を続けている。
 経営は両親と兄を合わせた家族5人で行っている。2人は元々飲食関係の仕事をしていたが、両親の手伝いをしているうちに野菜を育てるやりがいや喜びを感じるようになって、3、4年前から本格的に取り組み始めた。
 こだわりは安全・安心でおいしい無農薬野菜を育てることで、福井県の認証も取得している。種についてもできる限り自分たちで実を乾燥させて作り、自然のままで栽培することを徹底している。
 しかし、無農薬栽培では虫や病気の問題がつきものなので、虫が付いていないかを毎日一つ一つ確認している。手間暇かけているからこそ、佐藤さんたちの愛情が野菜に伝わって、おいしい野菜ができるのかなと感じた。
 栽培しているのは一般家庭や飲食店のニーズに合わせた多品目の野菜で、西洋野菜もある。ハウスの中を見学させてもらうと、カリフラワーでも白色だけでなく、紫色や緑色、オレンジ色まであって驚いた。とてもカラフルでかわいく、こんな食材を使ったら食事が楽しくなりそうだなとわくわくした。
 また、佐藤さんたちは新しい挑戦も視野に入れている。それは、食材の生産だけでなく、加工や販売も自分たちで行う「6次産業化」である。例えば、重武農園で採れたレモンをその場でレモンジンジャーやホットレモンにして提供したり、親子で楽しめる体験型のイベントを開いたりといった活動を目指している。
 どんな所でどんな人が作っているかを知った上で、食べ物を味わう方がおいしいと思うし、楽しくて記憶にも残りやすい。例えば、地元の学生たちと協力してイベントを企画しても面白そうだし、若い人たちも参加しやすくなって地域の活性化につながるのではないかなと、私の想像も膨らんだ。
 2人はけんかをすることもあるそうだが「進んでいきたい方向性は同じなので大丈夫」と笑顔。自ら目標を立てて前に進んでいて、それまでの過程も楽しんでいるように感じた。私も見習って、楽しみながら壁を乗り越えていきたいと思った。

※ 本記事は、令和元年12月26日付福井新聞に掲載されました。