30代4人が大規模経営

後継者不足解消へ光明

坪谷 香菜絵記者(福井県立大学 3年)

 今、農業において最も問題視されているテーマの一つが「後継者不足」。その課題に明るい道を指し示しているのが、鯖江市の農事組合法人「ファーム東陽」だ。
 同市川島町にあるファーム東陽は、109ヘクタールの大規模な農地で、水稲を中心に大麦やソバ、大豆、ブロッコリー、ミディトマトを育てている。経営の中心的存在は30代の男性4人。「農業の担い手は年配の方」というイメージもあったので、取材で訪れたときは少し驚いた。
 以前の役員が60歳代になり「さらに年を重ねる前に若い世代に託そう」と、2014年に役員の息子たちに経営継承された。そのうちの1人で、現在、代表理事を務める竹内康平さん(37)は「きれいな田んぼを次世代に残していかなければという気持ちだった」と振り返った。
 竹内さんは20歳から東京で働いていたが、27歳の時、父親から「農業をやってみないか」と誘われて帰郷。農業の知識は全くなかったが、今では「種から形あるものができてくるのが面白い」と魅力を語り「この道を選んで良かった。農業を通して豊かな生活を送るのが目標」と充実した表情を見せてくれた。
 若い世代への経営継承を機に、ソバやブロッコリーなどの作付けに挑戦。竹内さんは「自分も含め、年の近い役員4人でスピード感を持って意思決定できている」。今後の課題は人材育成といい、「定期的に人を雇い、先輩にノウハウを聞ける環境を整え、若い世代を育てていきたい」と話してくれた。自分たちが経営継承を経験したがゆえに、後継者のことを意識した答えだと感じた。
 取材に訪れた際、ブロッコリー畑を見学した。ブロッコリーを担当する吉村恭平さん(33)は私が通う県立大の先輩。「単価が高い時に販売したいが、病気にかかるなどして、うまくいかないこともある」と栽培や出荷の難しさを教えてくれた。サイズが一回り小さいだけで値段に数十円の差が出るそうで、シビアな世界だと感じた。
 比較的スムーズに経営継承を行い、若い世代が活躍しているファーム東陽は、後継者不足問題の中で明るい光のように思えた。農業は、私たちが生きていく上で必要不可欠な産業だ。新しく就農する人が増え、若い世代が農業を引き継いでいってほしいと強く思った。

※ 本記事は、令和元年12月19日付福井新聞に掲載されました。