品種改良や病害虫対策

試験場の役割を実感

宮崎 樹記者(仁愛大学 3年)

 いちほまれの発売が記憶に新しい9月中旬、取材に訪れた県農業試験場(福井市)では、福井の新たな稲の品種を生み出そうと研究員たちが情熱を注いでいた。1本1本、手刈りしているそうだ。これから先、コメの見た目や大きさ、硬さ、粒感、弾力などを確かめ、県内各地区での実地調査を踏まえ、膨大な新品種候補の中から選び出していく。いちほまれに続く、新たなコメの誕生が待ち遠しく感じた。
 さらに農業試験場では、ハイテク機器を駆使した作物の研究開発や病害虫対策にも取り組んでいる。取材に訪れた日は、顕微鏡で見た細菌と図鑑を照らし合わせながら、作物の病気の症例の見分け方に関する研修に取り組んでいた。「うどんこ病」にかかったキュウリの葉を題材に、次世代技術研究部生産環境研究グループの宮永智悠(ともひろ)さん(30)が若い職員に指導していた。
 研修に参加していた県嶺南振興局農業経営支援部の清水紗也佳さん(22)は「研修で得た知識をもとに、農家の方に植物の症状を聞かれたときに的確に答えたい」と熱く意気込みを語ってくれた。
 同じく研修に参加していた嶺南振興局二州農林部技術経営支援課の横山康幸さん(24)は、実家が農業を営んでいて「高校生の時から農業に携わりたいという強い思いがあり、この仕事に就いた」と語ってくれた。堂々とした話しぶりが印象に残った。
 試験場の職員が若い世代に熱心に指導し、また真剣に学ぶ様子からは「しっかり技術を伝えたい」「早く身につけたい」という思いが感じられた。私は今まで福井で育てられた作物を何げなく口にしてきたが、口に入るまでにたくさんの人々が関わり、苦労し、努力していることを痛感した。
 品種改良や病害虫の対策は、言うならば「食べ物の発明家」「農家の町医者」といった仕事だ。農業に関わる仕事は一見、地味にも思えるが、ちょっと見方が変わり、とても魅力的な職業に感じた。福井の農業が活気づくことを願って、農業試験場の役割や、そこで働く人の魅力を多くの人に伝えたい。

※ 本記事は、令和元年11月7日付福井新聞に掲載されました。