レタス整然「植物工場」

効率化進め安定生産

片山 留菜記者(福井大学 2年)

 

 「植物工場」。この言葉を聞いて違和感を覚えた。工場で植物が作られるという状況はイメージし難い。小浜市多田にある植物工場「グリーンランド」を訪ねた。扉を開いて目に飛び込んできたのは、ずらりと並ぶ武骨な鉄骨で組まれた棚と、その上に整然と並ぶ緑色のレタスたち。まさに「植物工場」だった。
 LED(発光ダイオード)ライトを使った水耕栽培で野菜を生産するグリーンランドは、2013年に設立された。運営するのは、スーパー経営を本業とする千葉県浦安市の木田屋商店。植物工場の事業を開始するにあたって、電気代の補助など条件が良かった小浜市を選んだ。
 設立当初は、予定の半分の大きさのレタスしか作ることができなかったというが、栽培方法の改善のほか、作業の効率化を進め、今では利益を出せる工場として実績を上げ、他社へのコンサルティングも行うほどだ。
 「工場」という自然とはかけ離れた環境で作られたレタスはおいしいのだろうか? 素朴な疑問に対し、工場管理課長の益井宏之さん(45)は「工場は野菜にとって過ごしやすい環境をつくることができます」と教えてくれた。光の量や気温、二酸化炭素濃度など、育ちやすい環境を整えてあげることで、みずみずしくえぐみの少ないレタスができるのだという。また、土を使わず外気も遮断することで、無農薬で菌が少ないレタスができるそうだ。
 この工場では37人が働いており、ほとんどは地元雇用だ。「工場」と聞くと作業は全自動で人間味がないイメージがあるが、収穫や定植、梱包などは人の手で丁寧に行われており、レタスには愛情が込められているのだなと感じた。実際に食べてみると、色鮮やかでシャキシャキと新鮮で、とてもおいしかった。
 農業従事者の減少、高齢化は大きな課題である。さらに近年は、異常気象や災害も多発している。農業経験のあるなしにかかわらず、少ない人数で安定した生産を行うことのできる植物工場は、これからの農業のあり方の一つになってくるだろうと感じた。
 木田屋商店は、18年から小浜市で稼働している第2工場に加え、今年は静岡県に第3工場を構えた。今後、全国に植物工場ができる日もそう遠くないのかもしれない。

※ 本記事は、令和元年12月5日付福井新聞に掲載されました。