ホウレンソウ 非農家の挑戦

産地守るため脱サラ

永井 杏奈記者(福井県立大学 2年)

 福井市東安居地区はホウレンソウの県内有数の産地。ただ、高齢化が進み生産量が減っていた。こうした中、地域の農業を守るため、2008年に合同会社「光合星」(同市大瀬町)を立ち上げたのが川村鉄兵さん(40)ら若手農家3人だ。ビニールハウス35棟でホウレンソウと小松菜を栽培している。
 農場長を務める川村さんの実家は非農家。川村さんは高校卒業後、サラリーマンをしていたが、もっと自由に納得いくまで働きたいと思い、脱サラして農業を始めた。2年間、コメ農家と野菜農家で修業後、独立してトマト栽培をスタート。28歳で光合星を立ち上げた。
 「農地の雑草や石を取り除くことから始まった。最初は収穫するホウレンソウより雑草のほうが多かった」と川村さん。ホウレンソウは秋や春には、種をまいてから最短30日で収穫できるが、ビニールハウスが35棟もあるため、収穫作業が追いつかないことがあったそうだ。JAに出荷するホウレンソウの規格は長さ25~32センチなので、収穫が遅れてしまうと売り物にならなくなってしまう。私は見た目が良ければ長くても大丈夫と思っていたので驚いた。
 そこで川村さんは生育予測システムを開発した。パソコンに播種(はしゅ)日や草丈の長さを入力すると、日照時間や外気温などのデータを反映し、収穫予定日が分かり、出荷計画が立てやすくなったそうだ。
 トラクターで土を水平にならすことの難しさ、夏の暑さで収量が減ってしまうことなど多くの苦労を聞いた。ハウス内を見学し、ホウレンソウの成長過程を見て、ほかの作物の栽培状況も見てみたいと、農業への関心が高まった。
 川村さんは「休みの日も毎日、ハウスの様子を見に行き、ホウレンソウに話しかけている」とにこやかに語っていた。ホウレンソウ栽培について話す川村さんは生き生きとしていて、本当にこの仕事が好きなんだなと感じた。
 川村さんの生き方に刺激を受け、農業がいかにやりがいのある仕事か学ぶことができた。農業の担い手が不足し、耕作放棄地が増える中、28歳の若さで会社を立ち上げた川村さんのように、若い人に農業の魅力を知ってほしい。これから先、川村さんのような行動力、強い意志を持った人が福井の農業に明るい変化をもたらしてほしい。

※ 本記事は、令和元年10月31日付福井新聞に掲載されました。