無人農機 ドローン活用

スマート化 就農期待

鈴木 亘記者(福井県立大学 2年)

 近年、スマート農業という言葉を耳にするようになった。ロボット技術や情報通信技術(ICT)を活用して、省力化、精密化、高品質生産を実現する新たな農業だ。取材に訪れた坂井市坂井町福島の田中農園は、農林水産省のスマート農業実証プロジェクトに参加し、先端技術を活用した耕作を行っている。
 もともとトラックの配送ドライバーをしていた田中勇樹社長(41)は、農家に婿養子に入ったことがきっかけで農業に携わるようになった。現在は、無人トラクターやドローンを用いてコメ、大麦、大豆、ソバのほか、ブロッコリーやネギといった園芸品目の栽培を行っている。
 従来の作業方法からスマート農業に切り替えたことで、作業時間の削減と生育状態のデータ化が実現したという。ドローンで圃場を撮影することで作物の生育診断が可能となり、どこにどれくらいの肥料を与えればよいかまで知ることができる。これまで、生育状況のチェックは自分自身の経験のみで行っていたというが、データとして得ることができれば経験の浅い人でも正確な作業ができるため、効率的な生産につながると感じた。
 田中さんは、農家が高齢化していることに不安を抱いている。農業を志す若者が減少していることについて尋ねると「正直、将来農家になろうなんて思わないでしょ?」と言われ、少しどきっとした。田中農園では人材育成にも力を入れており、インターンシップや農業実習などを積極的に受け入れている。
 また、このスマート農業実証プロジェクトで培ったノウハウを広めていきたいとも考えている。高齢化や担い手不足など、農業全体が抱える課題を解決したいという強い思いを感じた。
 今回の取材で農業に対するイメージは大きく変わった。自動走行するトラクターやデータに基づく肥料管理にはとても魅力を感じた。これらの技術が実用化され、多くの若者にスマート農業を知ってもらうことができれば、就農する若者が増えるのではないかと思った。
 私は現在、生物資源学部で植物の遺伝子や微生物について勉強している。それを生かし、卒業後は農業に関わる仕事ができればと考えている。

※ 本記事は、令和元年11月28日付福井新聞に掲載されました。