ご飯と弟
第49回ごはん・お米とわたし 作文・図画コンクール
福井県農業協同組合中央会 会長賞
福井市灯明寺中学校 1年 小池 望美
ご飯と私の思い出は、自分の弟の成長過程でもあります。弟は、自閉スペクトラム症であり、幼少時から偏食があります。幼稚園に入園したころは、給食が出ても、ご飯しか食べない日がたくさんあったそうです。家でも白いご飯と牛乳と甘いおかししか食べなかったそうです。工夫して調理しても、絶対に口に入れてくれなかった弟ですが、白いご飯だけはもりもり食べたそうです。それならばと母は、たきこみご飯・まぜご飯・おじや・オムライスなど、色々なご飯料理をつくってみたそうです。それでも、食べてくれるのは、白いご飯だけでした。こまった母は、主治医の先生に相談をしてみました。すると、主治医の先生は、母にこう言いました。
「彼は、口の中や、味覚に感覚過敏があるようですね。白いご飯は、刺激が少なく、食べやすいんですね。無理をせず、お口に合った食べ物を見つけていけばいいですよ。それよりも、食べる楽しみや、食事の時間の楽しさを充実させていきましょう。」
母は、安心すると同時に、ご飯はやさしい食べ物なんだなと思ったそうです。
私もうっすらと記憶があるのは、いつも白いご飯しか食べなかった弟に、味つけのりでご飯をまいてわたすと、皿にもどされたり無視されたのを覚えています。でも、小学生になり、ラップでおにぎりをつくってわたすとたくさん食べてくれました。やがて、味つけのりをまいたり、焼きじゃけをまぜたりしても食べてくれるようになりました。食卓で、ワイワイと、いろんなおにぎりをつくって、弟を楽しませたりしました。そんな弟と、ご飯を食べるのは、チャレンジでもあり、楽しみでもありました。
現在、特別支援学校の6年生になった弟は色々なものを食べれるようになりました。それでも、変わらず白いご飯は、大好きです。弟の学校では、生活単元という授業があります。生きていくために必要な学習をしています。6年生になってすぐ、「おにぎりを作ろう」という授業がありました。内容は、お米をかしぐところから、おにぎりを完成させるまでの一連を、体験しながら学ぶことです。そこで面白い出来事が起きました。ある日、自宅の炊飯器に、生米がはいっていて、水も少し入っていました。私が開けてびっくりしていると、弟はもうしわけなさそうに
「ごめんなさい。」
と言いました。母に状況を伝えると、
「きっと学校で習ったように、お米をかしいで、水をはって、ふたを閉めたらご飯が出来あがると思ったんじゃない?きっと、自分で炊きたかったんだね。ほめてあげないといけないね。正しい炊き方は、スモールステップで練習しようね。」
その後、母と、私と、弟で、ご飯を炊く練習をしました。炊きたてのご飯で、おにぎりを熱がりながらもがんばってつくる姿を見ていると、成長したなぁと感じました。
私にとって、ご飯は大切な弟との思い出であり、つながりであると感じています。これからも、もりもりと白いご飯を、弟が食べて成長してくれることを、そっと見守っていきたいと思います。次は、たきこみご飯を一緒に食べられたらいいなと思っています。また一緒にご飯を作ったり、食べたりして、より一層弟に向き合っていけたらいいなと思いました。